小児歯科での矯正治療、始めるベストな時期とメリット・デメリット
今日は、多くの保護者の方から質問を受ける「子どもの矯正治療の開始時期」について、私の臨床経験をもとにお話しさせていただきます。
子どもの矯正、いつから始めるべき?
先日、5歳のお子さんを持つお母様から「友だちの子が矯正を始めたと聞いて、うちの子も早く始めたほうがいいのかしら」という相談を受けました。実は、これは本当に悩ましい質問なんです。
というのも、矯正治療の開始時期は、お子さんの歯並びの状態や成長段階によって大きく異なるからです。
矯正治療を検討すべき年齢の目安
乳歯列期(3〜6歳)
- 重度の咬み合わせの異常
- 著しい顎の成長の歪み
- 口呼吸や舌の位置の問題
混合歯列期前期(6〜9歳)
- 永久歯の萌出スペース不足
- 上顎の狭窄
- 反対咬合
混合歯列期後期(9〜12歳)
- 叢生(歯並びの乱れ)
- 空隙歯列
- 上下顎の不調和
なぜ早期治療を検討する必要があるの?
成長期ならではのメリット
顎の成長をコントロールできる
実際の治療例として、8歳の男の子の場合をお話しします。上顎が狭く、奥歯が交差咬合になっていましたが、成長期に拡大装置を使用したことで、わずか6ヶ月で理想的な顎の幅に導くことができました。
治療期間の短縮
成長期の治療は、顎の成長を利用できるため、治療期間が比較的短くなることが多いです。
心理的な負担が少ない
小学生の時期は、矯正装置への適応力が高く、また周りの友達も矯正をしている子が多いため、精神的なストレスが少ない傾向にあります。
早期治療のデメリットも正直にお話しします
考慮すべき課題
治療期間が長期化する可能性
早期に開始すると、永久歯の生え変わりに合わせて段階的な治療が必要になることも。
費用面での負担
複数回の治療になる場合、総額が高くなることがあります。
モチベーション維持の難しさ
長期の治療になると、お子さんのモチベーション維持が課題になります。
実際の治療開始時期の判断基準
当院では、以下の点を総合的に判断して、治療開始時期を提案しています
重要な判断ポイント
歯並びの状態
- 咬み合わせの具合
- 顎の成長バランス
- 永久歯の萌出状況
お子さんの成長段階
- 身長の伸び
- 骨の成長度合い
- 性別による成長の違い
生活環境
- 通院の負担
- 学校行事との兼ね合い
- ご家庭のサポート体制
実際の治療例から見る効果的な開始時期
ケース1:7歳女児の例
症状: 上顎前突
開始時期: 7歳8ヶ月
選択理由: 前歯の生え変わり時期に合わせて治療を開始することで、永久歯の位置を適切にコントロールできました。
ケース2:9歳男児の例
症状: 叢生(歯並びの乱れ)
開始時期: 9歳4ヶ月
選択理由: 奥歯の永久歯が生え揃う時期に合わせることで、効率的な治療が可能でした。
保護者の方へのアドバイス
早期発見・早期治療が有効なケースもありますが、むやみに急ぐ必要はありません。まずは、以下のような機会に歯並びのチェックを受けることをお勧めします
定期健診時
半年に1回の定期健診で、歯並びの変化をチェック
永久歯が生え始めた時期
特に前歯が生え変わる6〜7歳頃は要注意
気になる症状が出たとき
- 歯並びの乱れ
- 咬み合わせの違和感
- 顎の痛みなど
まとめ:ベストな開始時期は個々で異なる
矯正治療の開始時期は、お子さん一人一人の状態によって異なります。大切なのは、定期的な歯科検診を通じて、お子さんの歯並びの変化を観察していくことです。
心配な点がありましたら、まずは気軽に小児歯科専門医に相談してみてください。早すぎる治療開始を避けつつ、必要な時期に適切な治療を始められるよう、専門医がサポートいたします。
お子さんの健やかな成長のために、私たち専門医にできることを精一杯させていただきます。